なぜ戦略は現場で使われないのか
「コンサルに頼んで立派な資料を作ってもらったけど、結局誰も使っていない。」この話を、クライアントから初回相談のときに聞くことが多いです。資料の質の問題ではありません。使われない戦略には、構造的な理由があります。
「誰が実行するか」が書かれていない
戦略資料に書かれているのは「何をするか」だけで、「誰が、いつまでに、どのリソースで」が書かれていないことがほとんどです。外部のコンサルタントは組織の内部事情を完全には知らないため、実行者の名前を書けません。結果として、資料は方向性を示すだけで止まります。
実行まで落とし込むには、戦略を作る段階から現場の担当者を巻き込む必要があります。会議室で完成させた資料を後から渡すのではなく、草案の段階で「これ、誰がやれそうですか」と聞きながら作る。その一手間が、使われる戦略と使われない戦略の分かれ目になります。
現場の制約が反映されていない
「この施策を実行するには、週に10時間の工数が必要です」と書かれた資料を見て、現場の担当者が「そんな時間はない」と思った瞬間に、その資料は終わりです。外部から見ると合理的に見える施策でも、現場の人員配置・既存業務の量・社内の承認フローを無視していれば、実行不可能です。
現場の制約を把握するには、現場に行くしかありません。資料を作る前に、現場担当者と1時間話すだけで、実行可能性の判断が大きく変わります。
「測れないKPI」が設定されている
「顧客満足度の向上」「ブランド認知の拡大」といった目標は、測定方法が決まっていなければ機能しません。四半期が終わったときに「達成したかどうか」を判断できない目標は、実質的に目標ではありません。
KPIは、測定方法・測定頻度・担当者を同時に決めて初めて機能します。「月末に、誰が、どのデータを見て判断するか」まで決めておくことが、計画を動かし続けるための最低条件です。
使われない戦略を作るコストは、資料作成の費用だけではありません。動かなかった時間と、動けなかった組織の機会損失も含まれます。